次に観るべきインド映画「バジュランギおじさんと、小さな迷子」感想
インド映画に対して、
シリアスでもロマンスでも踊ってる
という薄っす~いイメージしか持っていなかった私ですが、
友人に勧められてこちらを観ました。
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」
「ダンガル」「バーフバリ」に次ぐインド映画興行成績第3位とのこと。
インド映画は「きっと、うまくいく」以来
「バーフバリ」もずっと勧められているのですが、
実はインド映画はまだ「きっと、うまくいく」しか観たことがありません。
ところで、「きっと、うまくいく」が興行1位じゃないの!? と思ったら、
公開された2013年当時はぶっちぎり1位を更新したにも関わらず、約10年の間にランキング圏外になっていました。
インドの映画市場の広がりが伺えますね。
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」あらすじ
パキスタン山奥の小さな村に住む女の子・シャヒーダー。
生まれてから一度も声を発したことがない彼女を心配した家族は、
インドの有名な寺院に願掛けに連れていくことを決める。
母と列車に乗り込んだシャヒーダーだが、
帰路での停車中に外へ出てしまい、ひとりインドに取り残されてしまった。
見知らぬインドの町をさまようシャヒーダーが出会ったのは、心優しい青年・パワン。
ヒンドゥー教のハヌマーン神の熱心な信者であるパワンは、これも神の思し召しと、シャヒーダーの家族を探す手助けをすることにした。
しかし、喋れない上にまだ幼く文字も書けないシャヒーダーから、名前はおろか出身地の手がかりさえも聞き出すことができない。
そんなある日、ひょんなことからシャヒーダーがパキスタンのイスラム教徒と判明し、パワンや周りの人々は大きな衝撃を受ける。
国境を接していながらも、歴史、宗教、経済など様々な面で激しく対立するインドとパキスタン。
パワンは一刻も早くシャヒーダーをパキスタンに返そうとするが、警察や領事館、裏社会のブローカーまでがあてにならない。
彼はついに、自ら国境を越えてシャヒーダーを家に送り届けることを決意する。
シャヒーダー役の子役が可愛すぎる
この素晴らしい映画の感想第一声として適切かはともかく、
適切かどうかの判断ができなくなるほどに、
シャヒーダー役のハルシャーリー・マルホートラちゃんが可愛らしい!
この、こぼれおちそうな大きな瞳・・・!
身振り手振りと表情の演技
シャヒーダーは声が出せず、文字もまだ分からないという難役。
ひたすらに身振り手振りでパワンや周りの人々とコミュニケーションを取ります。
笑顔で思い切り挙手したり、しょんぼりと相手を見つめたり、
パワンでなくとも、彼女が何を伝えたいのかなんとか汲み取ってあげたくなる愛らしさです。
シャヒーダーは喋れないもどかしさだけでなく、
まだ5歳ということもあり、奔放な行動でパワンに迷惑をかけることもあるのですが、なんだか憎めないんですよね……。
正直、この可愛らしさだけでも観る価値がありました。
個人のリスペクトは国をも動かす
192もの国にビザなしで行くことができる日本人として過ごしていても、国同士の歴史的な摩擦とは無関係でいられません。
その摩擦を認識しているだけに、できるだけ偏見を持たないようにと意識していても、
ごく無意識にマイナスイメージから入ってしまうことがある気がします。
他の考えを許容できていなかったパワン
パワンは馬鹿が付くほど正直なので、パキスタン国内でもインド人であることを隠しません。
そのためにスパイと間違われ警察に追われることにすらなります。
そうした中でも、パワンの話を信じて彼を手助けしてくれるパキスタン人もいました。
こういったパキスタン人に出会う中で、パワンの気持ちにも少しずつ変化があったのがとても面白かったです。
それまでのパワンには、
「パキスタンはインドと対立する国」「ハヌマーン神が唯一の信仰対象」
というような価値観があったように思いました。
これは育ってきた環境による無意識で、彼自身は他害的な感情を持っているわけでもないのですが、
別の考えかたの人に出会う機会も少なく、またその馬鹿正直さゆえに、他の考えに触れるとき少し拒否反応がありました。
否定はしないけど僕は遠慮しておくよ……みたいな距離感です。
パワンの心を揺らした導師の行動
パキスタンで警察から匿ってくれた導師がパワンらの道行きを祈ってくれたときにも、そのアレルギーが表れました。
導師はハマヌーン派とは違う動作で彼らのために祈ってくれ、
パキスタン人の連れ合いとシャヒーダーは同じように返すのですが、
パワンだけはとっさに同じ仕草を返すことを躊躇います。
彼はハマヌーン神の熱心な信者で、他の宗教の建物に入ったりするだけでも神に許しを請うほどでした。
しかしそんな彼を見た導師は逆に、
「あなたの宗派ではどうするのですか」と問いかけ、ハマヌーン神に祈りを捧げてくれたのです。
導師は、真に祈るとき形よりも大切なものがあると教えてくれました。
正直なパワンは何事も形を大切にしてしまうところがありましたが、導師に出会ってからは目的のために「言い訳」を考えることもありましたね。
感動のラストシーン
意外な展開をいくつか越えて、感動のラストシーンは堪えようもなく泣いてしまいました。
美しい山々、空、雪。
国境という人間が引いた線の両サイドでは、まったく同じ景色が広がっています。
この景色の映像は、作中指折りの美しさでした。
そこへ無数の人々が、たった一人のインド人・パワンのためにわらわらと集まってくる様子。
個人同士で心が通えば、国という大きな仕組みを動かすこともできると思える素敵なラストでした。
国同士のひずみが国民同士のひずみにも発展してしまうような出来事が多い今日だからこそ、ぜひ多くの人に観てほしい映画です。
※どっこいサブスクで観れません
そういえばこの映画、インド映画のイメージに比べて全然踊ってないな……
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