私たちにできることは何もない「星の子」ネタバレ感想

国民大体みんな大好き芦田愛菜先生の主演作品です。

私も大好きです。

 


芦田愛菜主演「星の子」をAmazonプライムビデオで観る

残念ながら「宗教」「カルト」などが話題に上がりがちなこのタイミングで観てみることにしました。

 

ネタバレを避けるべき映画ではないと思いますが、

以下では物語の核心についてふれている箇所や、観ていないと誰?何?となる箇所もあるので、あらすじ以降をご覧になる際はお気を付けください。

 

芦田愛菜主演「星の子」あらすじ

ちひろは未熟児として生まれ、生後しばらくは病弱な赤ちゃんだった。

 

しかし、父が同僚から教わった「宇宙のエネルギーを含む水」を使い始めるとすっかり健康になり、

両親はこの「奇跡」をきっかけに、水を販売していた宗教を熱心に信じるようになる。

 

宗教にはまった両親を避けるように、ちひろの姉や親戚は家に寄り付かなくなるが、

ちひろ自身はそんな生活に違和感を覚えることなく、中学三年生の春を迎えた。

 

しかしある日、偶然にも、

一目ぼれの相手である教師・南に、宗教儀式を行っている両親を目撃されてしまう。

 

このことをきっかけに、ちひろは自我の芽生えと両親の愛の間で揺れることになる。

 

宗教二世という”タブー”

本作は「宗教二世」という、ある種タブーとされている問題を取り扱っています。

 

それでいて「善」とも「悪」とも、そして「こうあるべき」とも、

何の結論もつけないことで絶妙なバランスを取られていることに感動しました。

 

もちろん逃げの手法として評価したいのではなく、

宗教という問題を扱う中で、個人的にこれはひとつの正解であると感じたからです。

 

宗教二世という言葉

そもそも宗教二世とは、

親が信仰している宗教を同じく信仰している・または信仰していた人とされます。

 

しかしこの「している」「していた」は、必ずしも能動的なものではありません。

 

というか、生まれたときあるいは幼いころから「環境」としてそこにあったら、

選択の余地がない・選択するという選択の余地もないみたいなことは往々にして起こりえるでしょう。

 

宗教二世を扱った作品

宗教二世を扱った作品として、

最近では「「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」が短期打ち切りとなって話題を呼びました。

 

少し前なら「よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話」「カルト宗教信じてました。」などが挙げられると思います。

 


よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話 (ヤングマガジンコミックス)

 


カルト宗教信じてました。

 

個人的にとても印象的だったのは「カルト村で生まれました。」

財産を共有して生きる共同体に生まれた子どもたちの成長と共同体からの離脱までを、ほのぼのしたタッチで描くエッセイです。

 


カルト村で生まれました。 (文春e-book)

 

宗教団体から逃れた人の作品では、子どもから見た宗教や信者のいびつさを描くものが多い中、

「カルト村で・・・」は子どもたちが当たり前に受け入れている生活としての宗教を描いています。

 

同じコミュニティの中でお友だちもたくさんいるから、

ぱっと見ふつうの寮生活のようで、でもよく見ると違和感のある規則がたくさんある。

 

宗教や宗教二世というものが頭ごなしに否定されていない分、

どういった部分が「外の世界」と違って、どういった「不便」があるのか可視化してくれます。

 

そういう点では「星の子」と最も近いかもしれません。

 

風邪をひかない水と人々の反応

病弱だったちひろを救ったとされる水は、10年以上が経った今でもちひろの家に常備されています。

 

特別な儀式で宇宙のエネルギーを込めてあり、

布に浸せば湿布代わりにもなるし、飲み続けていれば風邪をひかない万能水。

 

この水はちひろの両親が信じる宗教を具現するものとして、作品全体でキーアイテムとなっていました。

 

否定的だった伯父と南

まずは、この水を水道水とすり替えて科学的根拠のなさを示した伯父です。

 

大友康平、コワモテだし不器用だけど家族思いで声がでかい親戚役がめちゃくちゃハマってました。

うちの親戚にもいる、多分一族にひとりふたりいるおじさん。

 

彼の家族もまた、両親によって宗教の道に連れ込まれた姉妹を心配して、ちひろに家を出るよう助言をします。

しかしちひろ自身は特に困っている部分もないため、伯父家族の申し出を丁寧に断っています。

 

ここで冒頭に立ち返りますが、

宗教から「逃げろ」と外野が言うことは本当に正しいのでしょうか。

 

親しい人が明らかに騙されてお金を巻き上げられていると思えば、どうにかして助けたいと思うのは当然の心情です。

 

しかしそのとき私たちは、

「明らかに」「騙されて」「助けたい」これらすべてを疑う必要があるのではないでしょうか。

 

それは不良に殴られて財布を強奪されているクラスメイトを助けるのとは訳が違います。

本来、彼らの信じるものを否定する権利は誰にもありません。

 

彼らにとっては私たちが言う「科学」も信仰の一つである、

という可能性を考えなければいけないのだと思います。難しいですが……。

 

そういった中でやっぱり最悪だったのは南でしたね。

 

岡田将生、観る映画すべてで強烈なキャラクターを演じているので、

もう出てくるだけで笑ってしまうようになりました。

 

さて、南は、様々な鬱憤が溜まった挙句とはいえ宇宙水を「変な水」、

ちひろに対しては「学校は宗教の勧誘に来る場所ではない」と公衆の面前で怒鳴り散らします。

 

ちひろも授業中に落書きばかりしていたので非がないとは言えないのですが、

中学校の先生ってまじでこういう怒り方するよね……と嫌な思い出がよみがえりました。

 

彼もまた、宗教というものの背景を考えずアレルギー的に否定をした人間でした。

 

あいつ性格悪いねという台詞

そんな南を「あいつ性格悪いね」と評したのが、ちひろの数少ない一般の友人であるなべちゃんです。

 

なべちゃんはちひろの幼馴染で、

美人という自信もあってか、周りに左右されない意思の強さを持っている女の子。

 

ちひろの家庭環境を否定するでも同情するでもなく、ただフラットに受け入れているのが印象的でした。

 

彼女は南の発言で傷ついたちひろに寄り添いながらも、

「ひどいこと言うね」や「気にしない方がいい」とは言いませんでした。

 

あくまでも「あいつ性格悪いね」と言うことで、

南が宗教を否定したこと自体ではなく、その表現の仕方を非難したなべちゃん。

 

ちひろは今まさに、育った環境と世間的な常識の間で揺れています。

 

南の発言を否定しちひろの環境を肯定することで慰めることはできますが、

それはこれからのちひろ自身を否定する可能性もありました。

 

なべちゃんのフラットな発言は、ちひろを最大限に救う結果にもなったと思います。

 

なべちゃんと新村くん

なべちゃんを演じた新音さんと、その彼氏である新村くんを演じた田村飛呂人さん。

めちゃくちゃ良かったです!

 

 

新村くんがなべちゃんの親友であるちひろを邪魔に思ったりしていなさそうで、

一貫して親切なのもちょっとおばかなのも、すごく愛らしかったですね。

 

南が激高したあとの激重シーンで

「俺も(宇宙水飲んでないけど)ぜんぜん風邪ひかないけど」と笑う彼にこちらも救われました。

 

新音さんは「渇き。」の小松菜奈を思い出すような、自分の美しさに裏打ちされた芯の強さがすごく似合っていて、

彼女がちひろのそばにいてくれると思うととても安心できました。

 

そして田村さんは本作が映画初出演だそうですが、

こういう子いたわ~男子からも女子からもめちゃくちゃ人気あったわ~

という男の子でまぶしかったです。

 

芦田愛菜さんとこの二人は2004年・2005年生まれとほぼ同い年で、

なんというか教室や制服に全然違和感がなかったです……若さ……。

 

片やすでに10年以上のキャリアを持つ大物俳優とモデル出身の新人俳優たちが青春映画で友達役をやる、

という取り合わせ自体が映画の題材になりそうですが、本当に全員上手ですごくよかったです。

 

揺れるちひろとラストシーン

はたから見れば「不審者」の両親、戻ってこない姉、両親から離れろと言う親戚たち。

30万円と引き換えに集会にやってきた男性。

 

風邪をひかない水は、本当にパワーを宿しているのだろうか。

 

少しずつちひろの中の宗教は揺らいでいきます。

 

芦田愛菜やっぱりすごい

この揺らぎがちひろの表情や息遣いから痛いほど伝わってきて、さすが芦田愛菜でした。

 

特に、保健室の先生と話しているシーンはターニングポイントになっていて大好きです。

 

「うち宗教なんです」という直接的な相談ではなく、

「私風邪ひかないんです」「この水飲むと風邪ひかないんです」「でもやっぱり風邪ですか?」と気丈に尋ねるちひろ。

 

先生はおそらく教員間のネットワークでちひろが「宗教の子」と知っているはずですが、

厳しく諭すことなく「風邪でしょ(笑)」と当たり前であることのように答えます。

 

南には彼女を見習ってほしいですね。

 

ラストシーンとちひろのこれから

冒頭に書いたように、本作の中ではちひろが家を出るシーンはないですし、

ちひろ自身が宗教を「信じている」のかについても「わからない」と言っています。

 

このようにはっきりとした結論は描かれないのですが、

両親の付属物であったこれまでとは異なる章が始まったのだと思わされるのが、ラストシーンの天体観測です。

 

両親はちひろに美しい星を見せるために、夜遅くに外へ連れ出し、

入浴時間の締め切りを気にすることなく星を眺め続けます。

 

こういう小さな規則を平気でないがしろにする両親は、やっぱりちょっとズレちゃってるのかなーと思います。

 

流れ星を三人で見ることに執心する両親と、

そんなことはもういいから早く帰ってお風呂に入ってほしいちひろの温度差がはっきりしていました。

 

愛情をたっぷり注いでくれる両親をまだ強くは突き放せないちひろですが、

遠い進学先へ行って、少しずつ自分で選べることが増えてくれたらいいなと思います。

 

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