邦画の悪いところ出た。菅田将暉主演「CUBE 一度入ったら、最後」ネタバレ感想

2021年11月2日

地獄のような前評判「★1.4」を横目に、不穏なサブタイトル「一度入ったら、最後」を横目に。

 

観てきました、「CUBE 一度入ったら、最後」

 

 

映画代返せとまでは言わないけど、ポップコーン買ってたら怒ってたかもしれない。

 

俳優陣が良かっただけに残念です。

 

原案「CUBE」のネタバレ感想はこちら。

 

(本記事は「CUBE 一度入ったら、最後」のネタバレを含みます。ご注意ください)

 

菅田将暉主演リメイク版「CUBE」あらすじ

後藤は、眠りから覚めると見覚えのない立方体空間の中にいた。

 

目の前には同世代の柔和そうな男・越智と、無口な男子中学生の千陽。

二人も後藤と同様に、知らない間に拉致されてきたという。

 

持ち物はすべて奪われており、

部屋は四方にハッチドアがあるばかりで何の手掛かりもない。

 

途方に暮れた三人の前に、

ぶっきらぼうな井手、謎の女性・甲斐がそれぞれハッチから現れる。

 

ハッチの向こうには同じような部屋が続いており、

部屋によっては、死に直結するトラップが仕掛けられているという。

 

五人は死のトラップに警戒しながら、脱出を目指し移動し始めた。

 

しかし、威圧的な井手や、途中で合流した安東に委縮してしまい、

なかなか団結できないメンバーたち。

 

彼らは力を合わせて脱出できるのか?

 

リメイク版「CUBE」はグロい?

原案の「CUBE」は、来るぞ来るぞと見せかけて何もない

というハラハラ演出が多いのですが、その点はリメイク版も同様でした。

 

結論、「CUBE 一度入ったら、最後」は、

ほとんどグロくありません。

 

血しぶきも上がらないし、内臓も出ません。

最初から部屋に閉じ込められているので、驚かせシーンもほぼありません。

 

そして、さすがに有名どころばかり使っているだけあって、

損壊した身体は描かれません。

 

原案の有名シーン「最初の男」(以降ネタバレが含まれます)

オリジナル版「CUBE」では、ワイヤーのようなもので、

男がサイコロステーキ状にカットされるところから始まります。

 

 

オープニングアクト的に、本編と無関係な男が無惨に殺されるという、

ショッキングですが「CUBE」の不気味さを伝える重要なシーンです。

 

リメイク版では柄本時生が最初の男を演じていて、

オリジナル版の雰囲気は踏襲しつつ、グロさはゼロになっています。

 

 

リメイク版「最初の男」は、身体が鉄骨に貫かれますが、

血もほとんど出ず、型抜きされた肉塊がボロンと出てきて終わりです。

 

それでいて、本作の中では指折りのグロいシーンに当たります。

 

とても良い感じにオマージュされていたので、

全編このリスペクトを持って進行してほしかったです。

 

というわけで「CUBE 一度入ったら、終わり」は、

グロが苦手な人もほぼ観られるのではないかと思います。

 

予告カットで菅田将暉がズタボロだったけど?

ティザーで菅田将暉がズタボロになっていたので、

いつ来るんだろう? とひやひやしながら見ていたのですが、

少なくとも徐々に負傷していく感じではありませんでした。

 

私は切り傷を負う場面がかなり苦手なので、その点はありがたかったです。

 

ラストシーンでは切り傷だらけでボロボロになっていますが、

その過程や痛がるシーンは描かれませんし、

自ら部屋に残ったこともあり、どこか達成感のある顔をしているんですよね。

 

美しすぎる重症人という感じでした。

 

グロいシーンは3か所程度

ビビりでグロシーンが苦手な私基準で観たところ、

「CUBE 一度入ったら、最後」のグロいシーンは3か所かなと思います。

 

といっても本当に目を背けるような絵面ではないので、

強いて言えばに過ぎませんが、まず前述の冒頭シーンが1か所目。

 

あとは、越智と安東が一緒にいるシーンだけは、

来るぞ来るぞで本当に来るので気を付けてください。

 

リメイク版「CUBE」のがっかりポイント①キャラクターの肉付けがない

今回、オリジナル版の「CUBE」は原案と表記されていて、

トラップが仕掛けられた立方体という舞台は継承しているものの、

キャラクターは完全に別物になっています。

 

それ自体はいいのですが、これなら完全にオリジナルのままやった方がよかったんじゃないかと思いました。

 

個性のないキャラクターたち

オリジナル版は、自称とはいえ、

警官・数学が得意な女子大生・精神科医・脱獄名人など、

かなりバラエティに富んだ面子がいました。

 

それぞれの特技を生かして、脱出に向けて知恵を出し合い、

トライ&エラーしていくのが、映画全体の流れになっていました。

 

しかしリメイク版では、ぱっと見、

 

陰キャの若い男性×2

粗暴な若い男性

物静かな男子中学生

物静かな女性

老害

 

という「ふつうの人」の集まりです。

 

それで面白くなるなら別に良いのですが、

話し合い(ほぼしないけど)にも行動にも発展性がなく退屈でした。

 

仲間割れが浅い

キャラの薄さは、キャラクター同士にとっても同じです。

彼らは冒頭に自己紹介をしますが、全員が名前とせいぜい職業しか言いません。

 

そのため、

仲間割れをしても、ほぼ社会的なレッテルで罵り合うだけです。

 

一緒に行動しているから生まれる類の不満ではなく、

日ごろの恨みをCUBEの中で代表者にぶつけている感じです。

 

「大人は嫌い」とか「老害は嫌い」とか「若者は嫌い」とか、

個人に対する感情ではないんですよね。

 

しかし、パーティーにとって戦力にならない人ばかりなので、

こちらとしては、「そんなにいやなら別行動すれば?」としかなりません。

 

むかつくけどスキルのために一緒に行動せざるを得ないからこそ、

精神的に追い詰められていくというひりひり感がありませんでした。

 

とりあえずみんなで行こ! という雰囲気は、

リアルといえばリアルなのかもしれませんね……。

 

パーソナリティについてほぼ触れないのが不思議でした。

 

ようやく自分自身のことを話すときは、

みんなスポットライトを浴びたかのように長台詞ワンマンショーで、

ストーリーに影響を及ぼすというより、キャラクターの紹介に過ぎませんでした。

 

命の危機なのに必死さが足りないというか、どこか他人事のような。

日本人ぽいといえばそれまでですが、あまりに思考停止に感じました。

 

オフィシャルサイトで補完するのをやめてくれ

それでいて、オフィシャルサイトに行くと、

やたら詳細なプロフィールが掲載されているんですよね。

 

最近の映画このパターン結構多いですよね。

 

キャラクターブック的な補足説明は、

本編にプラスアルファで楽しめるものであるべきで、

それありきで本編作るのは甘えじゃないかなと思います。

 

とはいえ本作の問題はもはやキャラクター設定ではないので、

「ほんとはこんな設定があってね~!!?」という、

オタクの夢小説ネタノートを垣間見てしまった気持ち悪さがありました。

 

リメイク版「CUBE」のがっかりポイント②リメイクの意味がない

キャラクター設定も、俳優に頼りすぎて内容がペラペラでしたが、

それ以上にひどいのがストーリーでした。

 

一言で表すと「それCUBEのリメイクでやる必要ある?」

 

日本のテレビドラマでよく見るやつ

空っぽのキャラクターたちから出てくるのが全部、

ドラマやマンガで、しかもかなりの回数見た展開なんですよね。

 

自分の何気ない言葉が自殺の引き金になり「自分が殺した」とトラウマに!

それがふとした瞬間にフラッシュバックしちゃうんだ!

でも似た場面に再度直面した時、正しい選択をすることで乗り越えられたよ~!

 

とか、

 

会社の肩書で偉そうに振る舞う老害と、

それに反発して「静かにキレる」ゆとり世代

 

とか、正直、もうお腹いっぱいです。

 

もうちょっと別の心の傷ないかい?

いつまでその構図やってるんだい?

 

そういう「ありふれた日本のドラマ」を、

あえてこの「CUBE」のリメイクに入れ込む意味が分かりませんでした。

 

連れ去られてきた謎の空間で、「いつもの」をやってるだけです。

 

ワンセット撮影という美しさを崩してまでやることだったのか不明です。

 

まさに蛇足のオチ

杏さん演じる女性については、鑑賞中ずっと

「それ杏の顔面じゃなかったら許されない振る舞いだからな」

と思っていたものの、

 

途中途中に挿入される、

「あれ?  『逃走中』のスタッフ絡んでる?」

というようなメタ視点のカット。

 

これを見た時点で嫌な予感はしていましたが、

しっかり説明しきりましたね。(無駄に)

 

「CUBE」とは何か? という最大の謎に答えを出してしまう。

 

あえてこのヒドいリメイク版で、

このオチをつける必要あるのかと反発心を抱きました。

 

他の要素が良かったら気にならなかった部分だと思いますが、

他も伝統芸的な悪い部分が出まくっていたので、袈裟まで憎い感じです。

 

リメイク版「CUBE」のがっかりポイント③恵まれた予算からこの着地ということ

低予算アイデア勝利の名作をベースにして、

そうそうたる俳優陣を揃えて、

主題歌を日本一のポップス歌手に発注して、

 

それで出来上がるのがこれか、というガッカリ感が一番大きかったです。

 

日本のエンタメは死んだと思われても仕方がない。

そりゃ映画館ガラガラになるわと悲しい気持ちになりました。

 

原案と違うから怒っているわけではない

別に原案通りのものを見たかったわけではありません。

 

むしろ「CUBEがリメイク・菅田将暉主演」と聞いて待っていた人は、

原案の雰囲気を踏襲しつつ、日本らしいテイストが加わった、

全く違う展開を楽しみにしていたと思います。

 

リメイクします! と言って出てきたのが、

原案の良さを全殺ししたコスプレドラマだったからイヤなんです。

 

日本映画特有のじっとりとしたホラー感があるわけでもなく、

予算をふんだんに使ってこそ説明がつく分厚いストーリーがあるわけでもなく、

 

豪華すぎる俳優陣を使ったばかりに上滑りして、

ただただ安っぽくなっていたのが残念でした。

 

俳優陣はさすがだった

とはいえ、俳優陣はさすがでした。

シーンだけで見れば、本当にグッとくるものがありました。

 

後藤が千陽を大切に扱う様子も、菅田将暉の繊細な演技が光っていました。

ボタンをあげるシーンなんか、胸がギュッとなりました。

 

イヤな奴だけど一本気が通っているオッサンが似合う吉田鋼太郎。

機械的なふるまいがサマになる杏の美しさ。

 

そして、岡田将生が怖い。

怖すぎて面白かったです。

 

最後クリスマスツリーみたいになっちゃいましたけど。

 

原案の方は観て損なし!

というわけで、

リメイク作品「CUBE 一度入ったら、最後」の感想でした。

 

原案「CUBE」はめちゃくちゃ面白いので、まだ観ていない方はぜひ!

Amazon Prime videoなら「CUBE」が無料で見れる!

 

弊ブログ「CUBE」ネタバレ感想はこちらから。

 

リメイク版はアマプラかネトフリに遠からず入るでしょうから、

それからでいいんじゃないかと思います。