細けぇこたぁいいんだよ! シャマラン最新作「old」ネタバレ感想
M・ナイト・シャマラン監督の最新作「old」を劇場で観てきました。
久々の映画館です。
オフィシャルでは「謎解きタイムスリラー」と謳われていますが、
それはどうでしょう? という気がしました。
ネタバレだらけなので、これから見る方はご注意ください。
シャマラン監督最新作「old」あらすじ
キャパ一家はバカンスを過ごすため、「楽園」と謳われるリゾートホテルにやってきた。
6歳のトレント、11歳のマドックスの仲の良い姉弟と、良識ある両親。
一家は支配人に気に入られ、秘境のプライベートビーチへ招待される。
岸壁に囲まれた秘境の海は息をのむほど美しい。
同行の家族とも打ち解け、彼らはそれぞれにビーチを楽しんでいた。
しかし時間が過ぎるにつれ、奇妙なことが起こり始める。
子どもたちの身体が異様なスピードで成長し、
あっという間に二次性徴まで終えたような姿になってしまったのだ。
やがて大人たちも、自らの身体の老化に気づき始める。
彼らは生きてビーチから脱出できるのか。
「old」が”謎解きタイムスリラー”は嘘!
これだけは煽りを付けた人に文句を言いたいです。
なぜかというと、謎解き要素はないから……。
そもそも謎を受け入れている
「謎解き」というと、タネを探して解決するような気がしますよね。
しかし本作では、身体自体は明らかに老化していくので、
もはや謎を解いている場合ではありません。
なぜ老化するか? については、割と序盤に仮説が立てられますが、
以降は、どう対処するか? に話がシフトします。
対処といっても相手は超常現象なので、唯一の選択肢は「逃げる」です。
というわけで、
本作を正しく煽るなら「タイムリミット脱出スリラー」でしょうか。
「old」はグロい?
シャマラン監督といえば「スプリット」などは結構グロかった気がしますが、
「old」のグロさはどうでしょうか。
「old」はグロくありません!
少なくとも、内臓シーンはありません。
また、死体が多く登場しますが、腐敗・欠損した死体は映されません。
ただし、刃物で刺す・切るシーンがいくつかあります。
特殊なフィールド事情により血しぶきが上がるシーンはありませんが、
刺された側は普通に痛がるので苦手な方はご注意ください。
「old」残されたままの謎
細かいことを気にしなければ面白かったのですが、
個人的にどうしても気になった「残された謎」を考えます。
一度しか鑑賞していないため、私が見落としている点もあると思います。
答えが分かる方がいたらぜひ教えてください。
結局あのビーチは何だったのか? 明かされた謎
その前に、作中で明かされたビーチの謎についてまとめておきます。
・ビーチでは2時間が1年に値する速度で細胞が老化していく
・爪や髪は死んだ細胞なので影響を受けない
・ビーチは製薬会社の長期治験のために使われている
・ゲストは治験とは知らずにホテルおよびビーチに誘い込まれる
・ホテルのウェルカムドリンクが治験用の新薬である
・赤ん坊は環境に耐えられない
以上を加味して、残った謎について考えていきます。
なぜ死体が白骨化するのか?
1時間で2年の時が経つなら、食べ物はあっという間に腐るはずですが、
そこはきちんと説明がされています。
このビーチの時空の歪みは「生物の生きている細胞」にしか作用しないと。
というわけで、
爪や髪が伸びないのは、まあ良いとして……
経験を伴わずに心が成熟していくのも、まあ良いとして……
なんで死体が3時間で白骨化するんだろう?
死んだ=細胞がことを言うのであれば、
死んだ肉体はほとんど※影響を受けないのではないでしょうか。
※ 心臓が止まったらすべての細胞が即停止するわけではないため
とすると、死体が風化するまでには実時間で7年ほどが必要になり、
これまでの治験者の遺体があちこちにあってもおかしくないような気がしました。
なぜカーラは妊娠できたのか?
カーラのスピード出産シーンは、本作屈指の面白ポイントだと思います。
カーラ爆食い
→ ず・ずいぶん大きくなって……
→ 風船破裂チキンレース並みに大きくなるお腹
→ 出産についての駆け足チュートリアル
→ スピード出産
この流れ、劇場全体ちょっとフフってなってました。
映画と劇場の温度差が一番あったシーンかもしれない。
しかし厳密には、精子が「泳いでいく速度」は歪みの影響を受けないはずなので、
精子自体は子宮に辿り着く前に寿命で死ぬのでは? と思いました。
妊娠が成立する場所に精子が着くまで早くて15分(=半年)として、
精子の寿命は長くて1週間とのことなので……。
ていうかそう思うと出産も早すぎる……
成長はともかく出てくるのは運動なのに、10秒くらいで生まれたよね?
細けぇこたぁいいんだよ
ところで最終的には中年になるトレントですが、
カーラ出産時点では「さっきまで子役だった」こともあり、
本来6歳同士が性行為→出産までしたことを描くのか……と、
個人的にはちょっと嫌悪感を抱いたシーンでした。
マドックスはなぜセダンのことが分かったのか?
キャパ一家が到着したとき、すでに先客として佇んでいた黒人男性。
マドックスは、彼が人気ラッパーのセダンと気づいて興奮します。
セダンは血友病を患っており、治験に参加させられていたのでした。
さて、キャパ一家がビーチに現れる前夜からということで、
どう見積もっても6時間(=12年)はビーチにいたはずです。
いくら黒人はシワが増えづらいと言っても、
一見して「彼だ!」と分かり、違和感がないほど変わらないものでしょうか。
本人も、さすがに12年分も年を取れば状況が分かっていそうなものですが……。
とはいえ彼自身「何も語りたくない」としていたので、
ビーチの異様さを悟っていた可能性は高いです。
仮にそうでなくても、夏のビーチに座っていれば、
老化に近い疲労感は出てくるかもしれませんね。(無理やり納得)
治験としては条件が特殊すぎないか?
本作の終盤で、ビーチに病人を連れてくる理由が明かされます。
リゾートホテルを運営する製薬会社が、
長期観察が必要な治験を短時間で終わらせるために使用しているというものです。
冒頭にキャパ夫妻が飲んだウェルカムドリンクは治験の薬だったのか~!
伏線びっくり~!
という気持ち良さはあります。
しかし、環境が特殊すぎて、
このビーチで採ったデータに意味はあるのか!?
と思わずにはいられません。
「千と千尋の神隠し」ばりにモリモリ食べるならまだわかるのですが、
消化が早まっている気配も特になく、
細胞分裂の速度加速してる? そのエネルギーはどこから? とモヤモヤしました。
また、犠牲者リストが出てきて、かなりの治験者がいたことが伺えますが、
治験者の病気は多岐にわたります。
1つの病気・薬に対する母集団は少なそうです。
ウェルカムドリンクが薬だとしたら、
数年前に一度飲んだだけの薬が効いていることになりますし、
かなり見極めが難しいように感じました。
もしかすると、
本来は動物で試す人間の前段階を同じ人間でやっているのかな?
ちょっと怖いですね。
キャパ姉弟の身体能力パネェ
なんだかんだ生き残った姉弟たちですが、
ビーチ到着時には6歳と11歳だったのが、明朝には50代になってしまいました。
それで波のある海に潜ってサンゴ礁のトンネル(しかも途中引っかかりながら)を抜ける身体能力。
なかなか並の50代ができることではありません。
うーん。
コロナ禍に通ずるところもあり面白かった
などなど、個人的にモヤモヤしたシーンは多々ありましたが、
あまり深く考えなければ面白かったです。
とくに、
ビーチでの決死の脱出からラボに視点が移るシーンは、非情で良かったです。
老いたキャパ夫妻が、お互いを愛していることを再認識し、
穏やかに死んでいくのも感動しました。
また、カーラのセリフ
「私たちプロムも卒業式も経験できずに大人になるの?」(大意)
は、コロナ禍で大切な行事をすべて奪われている学生の声のようで刺さりました。
一番輝かしい時期をビーチに奪われてしまった姉弟ですが、
これからも仲良く過ごしていってほしいと思います。
ハッピーエンドっぽくしてるけど、全然ハッピーではないエンドですよね(笑)
細胞と人の命についてオススメの本「動的平衡」
細胞分裂と人の命について、めちゃくちゃ面白い本があります。
この本を読んでいなかったら、
もっとまっさらな気持ちで「old」を楽しんでいたかもしれない。
でも読んでいたからこそ、色々ツッコミどころを自分で探せて楽しかったです。
もし興味があったら読んでみてください。
電子書籍がないのが残念ですが……。
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