韓流ヘルタースケルターかと思いきやサイコホラー「整形水」ネタバレ感想
気になっていた韓国のアニメ映画「整形水」
Amazonプライムに来ていたのでさっそく観ました!
本記事にはネタバレを含みます。
ぜひ初回はネタバレ回避して観た方がいい映画なので、未視聴の方はご注意ください。
「整形水」あらすじ
イェジは容姿に恵まれず、強いコンプレックスを持っていた。
容姿が悪ければ実力があっても評価されず、他人からもきつく当たられる。
成長するにつれイェジの性格は歪み、幼いころから続けていたバレエも辞めてしまった。
バレエを辞めてからはメイクアップアーティストとして働いているが、
担当タレントからは罵られ、ストレスから過食を繰り返して容姿の悪さに拍車をかけている。
そんなある日、都市伝説だと思っていた“整形水”がイェジの元へ届く。
顔や身体を漬ければ、自由自在に思い通りの形に変えることができるという奇跡の水。
美しい顔と細い身体を手に入れたイェジはタレントとして芸能界に足を踏み入れ、
やがて美への執着は彼女の身を滅ぼしていくのだった。
サイコホラーの「整形水」はグロい?
「整形水」の公式サイトには
「底なしの欲望が暴れ、狂い出す。韓国発! 容赦なき整形サイコホラー」
とあります。
サイコホラーで検索した結果がこちら。
要するに登場人物がエグい死に方する映画ってことね!了解!
直接的にグロいシーンはない
アニメなので、たとえば「CUBE」みたいにサイコロステーキになるシーンがあっても、
まあ、なんとかなるかなと思うじゃないですか。
でも世の中には「ひぐらしのなく頃に」みたいに直視に耐えないグロアニメもありますから、油断はできません。
過去には放送規制の入ったアニメも。私世代のネットユーザーには馴染み深い画像ですね。
というわけでちょっとドキドキしながら見たのですが、
「整形水」にグロくて目を覆うようなシーンはありませんでした。
多少の流血と、
身体欠損シーンが一部あるので、苦手な方は注意してください。
直接的な場面は映らないので安心して画面を見ていて大丈夫です。
「整形水」だけど整形モノではない(ネタバレ感想)
美容大国である韓国。
わざわざ渡韓して美容整形手術を受ける日本人女性も多いです。
整形がポピュラーであることは、
つまり容姿への関心が強いということでもあります。
ともすれば私たちは、自らだけでなく他人の容姿までジャッジしてしまいます。
容姿はどうしても周りと並べることができるので、良くも悪くも自己肯定感に直結してしまう部分もあると思います。
日本にも、容姿を理由に虐げられていた主人公が美女になって……
という作品は多くありますよね。
整形モノの魅力
しかし前述したように「整形水」はあくまでサイコホラーで、
私が勝手に期待していた「整形モノ」の要素は薄かったです。
たとえば「ヘルタースケルター」や「累 -かさね-」がそれに当たると思っています。
これらの作品の魅力は、
醜女だった主人公が変身してからは自らの努力でその美貌を維持するところです。
岡崎京子(著)「ヘルタースケルター」より引用
松浦だるま(著)「累」2巻より引用
その努力が彼女たちの内面にも変化(良い変化とは限らない)を与え、
努力をしていることは一定の自信にもつながります。
しかし、生まれたときから美しい人のそれに比べ土台が歪んでいるので、
ふとした瞬間に積み上げた自信がぐらぐらと揺らぎ、
手に入れたものを失うのを恐れてさらに美に執着するようになるなど、
地獄ルートが待っています。
美しくなったことで周囲からの扱いが変わったことに戸惑いながら喜んだり、
美しい人に囲まれる環境に身を置いて彼らが当たり前に持つ自信に驚いたり、
かつての自分のような醜い容姿の人を見下すようになったり……
そういう精神の揺れ動きが面白さだと思っています。
整形水で性格ブスは治らない
そういった中、「整形水」はかなりお手軽に全身整形ができてしまいます。
岡崎京子(著)「ヘルタースケルター」より引用
「ヘルタースケルター」も全身整形ではありますが、
身体は後遺症でボロボロになり、簡単にはメンテナンスもできないため、
主人公のりりこは常に身体的、精神的に不調にさいなまれます。
その点、整形水には後遺症や痛みがありません。
太っても整形水に浸かれば粘土のように身体を整形できるので、
主人公のイェジは全く努力をしません。
整形水はかなり高額なのですが、
その費用の工面すら、こんな容姿に生んだ責任を取れと親にたかる始末。
内面を磨くターンがないので、
自分を棚に上げて他人を見下す性格に拍車がかかるのみで、
イェジを好きになるチャンスがありませんでした(笑)
意外な因果応報ラスト
というわけで、そういう感じか~と途中まで期待せずに見ていたのですが、
意外なラストに驚きました!
え、そっち!!?
と思うことが目白押しで楽しかったです。
ミリが消えた理由
性格がキツいタレント・ミリ
イェジがメイクを担当していましたが、
彼女は美しくなったイェジと入れ替わりで芸能界から消えます。
新陳代謝の激しい世界なので、
新しいタレントの台頭で単に人気レースから外れただけかと思いきや、
どうやら失踪してしまったと明かされます。
作中のタイミング的に、
ミリも整形水の愛用者で、メンテナンスしてくれる人がいなくなったため表に出られなくなった
と思わせてきますよね。
まさか全然関係ないとは驚きました。
ジフンによってバラバラにされ、
美しい顔のパーツをコレクションに加えられてしまっていたんですね。
外見は内面を写す鏡とかいう大嘘
というわけで、もう一つの驚きはもちろんジフンです。
業界人らしからぬ誠実さを描写される彼だけは、
イェジの「瞳」という「元から持っていた美しさ」に気づいてくれました。
この瞳がシンデレラの靴のような役割を果たすことは、観ている全員が期待することだと思います。
個人的には、
他の人と違って素の自分を評価してくれるジフンにふれることで、
イェジのひん曲がった性格が改善されていくような流れ(だといいな……)と思っていたのですが、
まさか地獄シンデレラになるとは驚きました。
イェジの珍しい瞳に気づいたのは、いつも美しいパーツを探しているから。
彼女のパーツを手に入れるべく、彼女をまんまと家に連れ込んだのでした。
殺戮の天使かな? と思いました……。
他人の目を宝石扱いするんじゃありません。
よく考えれば瞳の美しさだって、
イェジがたまたま持っていただけで外見の美しさには変わりないですもんね……。
君の瞳は美しい、じゃなくて、
どんな君も素晴らしいと言ってくれる人じゃないとダメなんですね。
愛されたいと思うときに願うこと
イェジは「ただ愛されたかった」と作中で何度か繰り返します。
それは、美しい人たちが、
ただ美しいというだけで評価を底上げされることに対しての妬みでもありました。
しかし、イェジの両親がそうだったように、
多くの場合、親は子を無条件に愛しています。
美しいことは愛されるための条件ではないんです。
誰かに愛されたいから美しくなりたいと思ってしまうなら、
それは他人軸や外見至上主義に溺れすぎているのではないでしょうか。
それでも、
少しでも綺麗になりたいという気持ちは、一般人である私ですら当然に持ち合わせています。
なぜ綺麗になりたいのか?
常に自分の欲望を解剖しながら、他人を恐れての自分磨きに溺れないよう、気を付けたいと思います。
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