願いと救いの映画「15時17分、パリ行き」ネタバレ感想
あらすじをナナメ読みしてほぼ前情報なしで観始めたものの、さすがイーストウッド。
最終的に泣いていました。
後述するようにちょっと独特な構成の映画ですが、90分ほどと短いので是非観てみてほしいです。
「15時17分、パリ行き」あらすじ
アムステルダム発、パリ行きの高速列車。
いつまでも使用中のトイレを不審がった乗客が様子を伺っていると、中から銃を持ったテロリストが現れた。
銃声が響き、大混乱に陥る車内。
しかしそこに居合わせ、テロリストに立ち向かった若者3人組がいた。
彼らはどのように生き、「その時」を迎えていたのか。
勇気ある行動に至った彼らの人生を追う物語。
「15時17分、パリ行き」はグロい?
毎度のことながら、実話ベースの映画にグロいかどうかの指標を入れるのはあまり良くないとは思うのですが。
でも、どうしても直視できないという人はいると思いますし、何より自分もそのタイプなので、【15時17分パリ行き グロい】で検索している人もいると思っています。
特にテロ系の映画だと、凶器がわりとお手製というか殺傷能力に全振りしたものが使われることも多く、目を覆うようなシーンがある映画もありますからね。
「15時17分、パリ行き」に、グロいシーンはほぼありません。
大量の出血が苦手という方は、スペンサーの研修中のシーンで1か所(治療練習用の人形ですが、結構生々しい)
刃物が苦手という方は、終盤の電車のシーンで1か所、それぞれウッと思うシーンがあると思います。
特に後者は急に来るので私もダメージを受けました。
逆に、そこ以外は痛いシーンもないので、じっくり見ていて大丈夫です。
「15時17分、パリ行き」ネタバレ感想
この映画のあらすじを、「高速列車の中で起きたテロに立ち向かった若者の話」と読み取っていたので、全然テロシーンが始まらず、あれ?と思っていました。
あらすじだけ読んで勝手に、
「ユナイテッド93」のような乗客とテロリストとの攻防映画かと思ってしまっていたんですよね。
90分強の短めの映画にも関わらず、たまに思い出したようにテロシーンのカットが数秒入り、あとは延々と続く子ども時代~青春時代の回想。
大丈夫か? 間に合うか?と正直心配していました。
でも、最後まで観て分かりました。
全部のシーンに意味があったんです。
あらすじの「高速列車の中で起きたテロに立ち向かった若者の話」はちゃんと正しくて、
「高速列車の中で起きたテロ」ではなく、「立ち向かった若者」にフォーカスしていたこの映画。
最後には号泣してしまいました。
スペンサーが報われてほしいと思わせる脚本
さてこの映画、主人公の3人組であるスペンサー、アンソニー、アレクは3人とも、実際にテロリストを制圧したまさにその本人なんだそうです。
意味わからな過ぎて何回か読み直したのですが、やっぱり本人なんだそうですよ。
あまりに自然すぎて全然分かりませんでした。
さて、やんちゃで、学校のはみ出し者だった3人ですが、若干斜に構えたアンソニーとアレクに対し、スペンサーはとても素直な子どもでした。
友だち想いで、信心深く、生徒会長選挙に立候補してみたりもしていました。
しかし注意力散漫な性質が祟って、何をやってもなかなかうまくいきません。
担任には学習障害を疑われ、悪友とつるんで母親に叱られるなど、大人の期待に添えない子ども時代を過ごしたスペンサーでしたが、軍への憧れは一貫して強く持ち続けていました。
努力の末、ついに入隊試験をパスしますが、そこでもまた生まれつきの性質により希望の職種には就けず、挫折を味わいます。
うろ覚えのあらすじに加え、このスペンサーの報われなさで「え、これテロリスト側の回想じゃないよね・・・?」と何度も心配しました。
全て必要だったフラストレーション
そんなスペンサーは不適正やら落第やらを経て、華やかさとは無縁の非戦闘部隊に配属されます。
それでいながら、ひたむきに頑張る素直な性格が幸いしてか、思いがけずやりがいを見出していきます。
同じく米軍に入隊し戦地配属されながらも刺激のなさから不完全燃焼のアレクに比べ、生き生きと日々の訓練に勤しむようになりました。
よかったね、スペンサー!!
このように私たちはスペンサーに子ども時代から寄り添うことで、当然のように彼に肩入れするようになります。
この優しくって少しおバカな愛すべき大男が報われてほしいと願ってしまいます。
そしてスペンサーは結果的に、
非戦闘部隊で習った柔術でテロリストの動きを封じ、応急措置も完璧にこなして、500人以上の乗客の命を救うことに貢献したのです。
「人の命を救いたい」と願い、クサらずに日々の鍛錬を怠らなかったことが、最後にすべて報われるのは本当に感動しました。
願いと救いの物語でした。
どこまでが実際の出来事で、どこまでが脚色かははっきりしませんが、映画として個人的にはとても好きでした。
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