あなたにとってスオミとは?「スオミの話をしよう」ネタバレ感想

な、長澤まさみ、かわええ~~~!!

 

正直もうそれだけなんですが、三谷幸喜監督の最新作「スオミの話をしよう」を完全に前情報なしで観ることができたので感想を書いておこうと思います。

ネタバレも含まれますので、知らずに観たい! という方は閲覧をお控えください。

 

 

「スオミの話をしよう」あらすじ

警察官の草野とその部下・小磯は、有名詩人の寒川の妻が失踪したという報せを受け、寒川の豪邸を訪れる。

大ごとにしたくないという寒川の意向を受けて知人の草野が呼ばれた形であり、失踪した寒川の妻・スオミは草野の元妻でもあるのだった。

 

寒川にとって、スオミは行先を告げずに放浪しても違和感のない闊達な女性だという。

しかしそれは、草野がスオミに対して抱くイメージとは180度異なっており、彼と過ごしていたスオミは、おとなしく従順な女性だったはずである。

 

そして次々と現れるスオミの「元夫」たちと、彼らの妻がそれぞれに見せていた「スオミ」たち。

 

本当のスオミとはどんな女性なのか。

スオミはどこに行ってしまったのか。

 

スオミの話をしよう。

 

ミステリではないので注意

タイトルと煽り文「この女、何者?」しか知らずに映画館に行ったので、ミステリを期待していたのですが、ミステリ要素はほぼゼロでした。

 

一緒に観たのは母だったのですが、母としては「いつもの三谷幸喜だなぁと思った」とのこと。

 

よく考えると、実は私自身は三谷幸喜作品ってほとんど触れていなくて、『ラヂオの時間』『みんなのいえ』『笑の大学』しか観たことがありませんでした。

古畑任三郎シリーズも最初から最後まで見たエピソードってないんですよね。

 

(平成ひと桁生まれでそんなことあるんだ)

 

ただ、古畑任三郎が大名作ということは知っていたので、てっきりミステリだろうと思い込んでいました。

 

ちょっとコンフィデンスマンJPを期待してしまっていた

あとどうしても、

長澤まさみ×正体不明の女=コンフィデンスマンJPのイメージがあまりにも強かった影響は否めません。

 

三谷幸喜による「ええい貸せ!長澤まさみはこう使う!」をやるのか!? やるんだな!?

と思った。

 

それだけに、勝手にどこかで伏線回収ドンデン返し系を期待していて、ちょっと肩透かし感がありました。

何かもうひと展開あると思っちゃったなというか、どうせ同じような役をやらせるならもっと上手くやることを期待していたような気持ちです。

 

とはいえ、ずっとクスクス笑えるような展開が続き、中だるみせず観られて良かったです。

ベッドシーンや下ネタもないので、家族でのお出かけやデートにもオススメ。

 

(口元を写すカットはないけど、キスシーンだけ1か所あります)

 

スオミが求めていたものとは?

さて、最終的に5人もの元夫が登場しますが、スオミは彼らのそれぞれに別の顔を見せていました。

ある時はおとなしく従順な妻、ある時は毒舌ツンデレ妻、ある時は自由闊達な妻・・・

 

なんかこの感じ覚えがあるな・・・と思っていたのですが、2017年の「奥田民生になりたいボーイ」でした。

 

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相手の望むように振る舞う女性と、彼女たちに人生狂わされて骨抜きになる男性たち。

そのとき男性はもちろん彼女をモノにすることに夢中なわけですが、女性側は何が目的なのでしょうか。

 

現実にはお金が目当てであることも多いと思います。

もっと身近な例であれば、水商売の構造だってそれに近いはずです。

 

しかし「狂わせるガール」のあかりにしても、本作のスオミにしても、そういう感じでもなさそうなんですよね。

あかりの場合はかなり明確に、自分に依存させることで自らの価値を確かめている節がありました。

 

愛してくれたから愛してあげた

ではスオミはどうでしょうか。

彼女の場合は最終目標が「親友の薊(あざみ)ちゃんとフィンランドの高級老人ホームで暮らす」なので、金目的っぽさもあるのですが、その割に初手が冴えない体育教師です。

 

2番目の夫は若干グレーながら商才のある実業家

3番目の夫は警察官(係長)

4番目の夫は警察官(ヒラ)

5番目の夫にしてようやく大富豪

 

知り合いの知り合いにわらしべ長者・・・

という感じでもないので、その美貌をエサにわりと来るもの拒まずタイプであることが察せられます。

 

実際にエンディングでも

「皆 私を愛してくれた だから私も愛してあげた」

と歌っています。

 

自分の愛情がご褒美になることが分かっている美女仕草ですよね。

 

スオミとフィンランドと草野

しかしこの歌詞、続きがあります。

 

「でも 私にはもっと好きなものがあるの

 それが ヘルシンキ ヘルシンキ」

 

このエンディングで明確に語られたのが、スオミのフィンランドへの執着です。

 

思えば作中、ちょこちょことフィンランドが顔を覗かせていました。

 

そもそもスオミの名前は、彼女の父親が駐在していたフィンランドを気に入って、フィンランド語で自国を指す「Suomi」と娘に名付けたものです。

また、魚川が着けているエプロンがマリメッコのものだったり、前述のようにスオミの目的がフィンランド永住だったりします。

 

しかし正直、作中で撒かれていたエピソードではちょっとしたキーアイテムぐらいの感覚だったので、スオミそんなにフィンランド好きなの!? と驚きました。

 

ただ、このトンチキソングエンディングを聴いて初めてしっくりきたことがあります。

元夫たちがスオミに対し「誰のことを一番愛していたのか?」と質問した場面のことです。

 

ここまでのスオミを見ていて、彼女は誰のことも本心では愛してなどいなかっただろう、と思っていました。

というか、全員のことを愛してはいたけれども、どれも本当の愛ではなかっただろうなと。

 

前述の通り、その愛はあくまでも「愛してくれた」ことへの見返りでしかなくて、スオミ自身が能動的に愛した夫はいなかったのではないかという感覚です。

しかし、エンディングでのヘルシンキ愛を見てからだと、5人の中でほんの少しだけリードしていた夫がいたんじゃないかという気持ちになりました。

 

それが4人目の夫・草野です。

 

3人目の夫の部下である草野とスオミは、警察関係者の集まるパーティーで出会いました。

スオミが飲んでいた「コスケンコルヴァ」という酒の銘柄を聞き、草野は「ああ、フィンランドの蒸留酒ですね」と何気なく返します。

 

他の夫たちに対しては比較的自由奔放な姿で接していたのに対し、草野の前ではおとなしくて従順だったのも、草野だけ他の夫とはタイプが少し異なっていたことがわかります。

 

草野がフィンランドの蒸留酒を知っていたのは単に彼が博識なだけで、結局は神経質でケチな性格が祟ってスオミに逃げられてしまうのですが、もしかするとその出会いは少しだけスオミの心に刺さっていたのかもしれません。

 

おまけ:薊ちゃんもカワイイ!!

そして本作を語る上で避けられないのはやっぱり宮澤エマの存在です。

なんだったらスオミ以上に変幻自在の女・薊を演じています。

 

彩度の高い洋服の似合うこと、似合うこと・・・

特にママ友として登場する薊が最高にチャーミングでした。

 

 

このシーンで着ているのはCABaNのカーディガンですね。

ずっと欲しかったんですが、この宮澤エマより着こなせる気が全くしないので物欲が成仏しました。