死亡フラグびんびんスリラー「FALL」ネタバレ感想
私はパニック映画が大好きで、サメ映画も大好きです。
サメ映画の中でも異色である「海底47m」のスタッフが再集結ということで楽しみにしていた「FALL」が、先日から各種サブスクで配信されています!
死亡フラグびんびんスリラー「FALL」あらすじ
フリークライミングを楽しんでいたダン・ベッキー夫妻と、ベッキーの親友のハンター。しかしその道中、ダンは岸壁から落下し、帰らぬ人となってしまう。
ベッキーはダンとの思い出にすがりながら酒浸りの毎日を過ごすようになり、1年が経とうとしていたある日、ハンターが家を訪れる。
ハンターは、地上600mの鉄塔「B67テレビ塔」に登り、ベンの遺灰をどこよりも高い場所から撒いてやろうと、ベッキーに提案する。
迷いつつも、親友の言葉に元気づけられたベッキーは、誘いを受けることを決意した。
「B67テレビ塔」の古く不安定なハシゴを縦に縦に登り続け、ついに頂上に到着した二人だったが・・・
「FALL」はグロい?
高所のパニックものということで、やっぱりグロさが気になる方もいると思います。
本作には、ケガをするシーンがいくつかあります。
ただしそのほとんどがアドレナリンドバドバ状態での負傷なので、負傷する瞬間が大写しになったり、それで痛がったりするシーンはありません。
また、冒頭でベッキーの夫であるダンが死亡しますが、地面にぶつかる瞬間や人間の内臓のシーンはありません。
(シカの内臓が出てるシーンはある)
というわけで、目を背けるようなシーンはないと考えます。
一般的な刑事ドラマとかと同程度です。
一級フラグ建築士ハンター
危険な場所に果敢にアタックする動画を配信しているハンターは、フォロワー6万人の人気配信者。
お色気コスチュームに「ぼくのそうぞうするアメリカ人」的な超絶ハイテンションと、
存在そのものが死亡フラグみたいなキャラクターです。
な ぜ そ ん な こ と を !?
と思うようなことを平気でやりますが、こうでもしないと効率よく命を危険に晒せないので仕方ありません。
地上600mってどのくらい?
ベッキーとハンターが本作で登った鉄塔は地上600m
実在する「サクラメント・ジョイント・ベンチャー・タワー」というテレビ塔がモデルになっているそうです。
荒野の中に突如そびえ立っているので、頂上の足場から見下ろしても基本的には荒野と道、そして点在する小さな建物があるばかりという景色になっています。
地上600mと言われても、簡単には想像がつきませんよね。
スカイツリーの展望室は450m・あべのハルカスは300m
われわれ日本人が比較的カジュアルに到達できる高所といえば東京スカイツリーですが、最も高い「展望回廊」でも地上450mです。
※あべのハルカスの展望台は地上300m
スカイツリーには、私も東京に住んでいたころ何度か登ったことがありますが、あそこまで高いと「うわ~遠くが見える~」って感じではないですよね。
というのも、もうそれぞれの粒や光が何かは判別できなくて、飛行機の中から見る夜景みたいだなと思いました。
そんなスカイツリーのてっぺんが634m
ようやくB67テレビ塔の高さに近づきます。
押上のあたりからスカイツリーを見上げると、まあまあな頻度でかすんでてっぺんが見えないんですけど、ベッキーたちはそのあたりまで生身で登って行ったということなんですよね。
気が狂っていますね。
ちなみに、札幌市民にしかピンときませんが、さっぽろテレビ塔が147m、札幌駅のT37展望台が160mです。
160mくらいだと直下が霞んで見えないということもあまりないですし、「あのだだっ広いのが北大」「あっちが石狩」「あれは札幌ドーム」「あれがすすきのの観覧車」などと全方角なにかと見えるので、札幌に行った際はT37に市民を連れて登るのがおすすめです。
450mのテレビ塔の電球交換をする動画
ところで、ちょうど450mのテレビ塔の電球を交換するという実際の動画がありました。
命綱を二本体制で、かけ直しながら慎重に登っていく様子が見れます。
景色的にはかなり「FALL」に近いですね。見るだけで心臓がヒュッとなります。
というわけで、以下は完全なネタバレを含む感想です。
知らずに最後まで観たい方はご注意ください。
ただのパニック映画で終わらない伏線回収
たいていのパニック映画は、その状況からいかに脱するか?が映画のキモになります。
ワニやゾンビを倒すとか、自然現象を解決するとか、いずれにせよ安全な場所に逃げるとか・・・
その間に極限状況下で人間関係上のトラブルが起きたり、パニックの元凶に襲われたりして場面に変化があるので、言ってしまえばそれ以上の事件はこっちとしても期待していないんですよね。
どっこい、そんな中で「FALL」には一つ大きな仕掛けが用意されていました。
中盤以降のちょっとした違和感
最も大きな違和感は、個人的には「え、その重要な場面でベッキーがドローン操作するの?」でした。
その前の場面でドローンの充電をベッキーがしたのは、まあハンターの手ズタボロだしなと受け入れることができました。
ベッキーも足にケガを負っていますが、そうは言ってもハンターはリュックを取りにいってくれたし、手がズタボロになったのもそのせいだし、そこへきて充電もやらせたらやっぱり不倫が許せなかったみたいになるし・・・
死人に口なしとはいえ、誘ったのがダンの方だったということも分かった今、ベッキーはハンターを許していたと思います。
それだけに、リュック奪還後の、あまりにもベッキー主幹な感じには違和感がありました。
いくら手のひらがズタボロとはいえ、どう考えてもハンターの方がドローン操作に慣れているのに、ベッキーがコントローラーを握るんだ?と。
案の定、降下が早すぎて、ドローンはトラックに破壊されてしまいます。
まさかハンターが幻想だったとは、気づきませんでした。
手をケガして登れないとか、うまいこと違和感を散らしてくれていたなあという印象です。
そう思うと、ベッキーがスマホで動画を見ていたときもバッテリーを温存しろとか口うるさく言いませんでした。
もしかすると、ダンとの不倫で後ろめたさがあったからかなと思えてきます。
いくら圏外とはいえ、いつ救出されるかも分からない中でスマホガンガン使うのは命知らずすぎる。
でも結局あのスマホ、4日くらいバッテリー持ったんですよね・・・。
衝撃のラストアタックと宗教感の違い
そして「FALL」ラストにして最大のビックリシーン。
それはハゲタカの襲撃でもなく、ハンターの死でもなく、スマホ着地アタックTAKE2ではないでしょうか。
序盤、ハンターの6万人のフォロワーに助けを求めるため、二人はハンターのスマホを地面に届けようと計画します。
ハンターのハイカットのスニーカーに靴下とブラパッドを詰め込んで緩衝材にし、スマホを詰め込んで地面に落としますが、どうやら不発に終わったようで、助けは来ませんでした。
終盤、片道切符の中でハンターの死体のそばまで下りるベッキー。
ベッキーの靴では薄すぎたことから、てっきりハンターのもう片方のスニーカーを回収しに来たのかと思いきや、まさかの身体目当てでした。
日本人の倫理観的にはかなりアウトだけど・・・
ハンターのスニーカーにスマホを入れて、ハゲタカについばまれて空いたハンターの腹の穴にそのスニーカーをねじこむベッキー。
いくら「これしかないの・・・」と謝っていてもショックな絵面です。
その直後、「許して・・・」と言いながらハンターの死体を高所約600mから押し出します。
想像はついていたものの、まじか!?と声を上げてしまいました。
刑法190条に死体損壊罪があるから!とかいう理屈とは別に、私の個人的な倫理観でも死体に生者とそう変わらない人権を認めているようで、あえてその死体を傷つけるという行為にはかなり嫌悪感があります。
しかし、この場面を見てふと思い出した本がありました。
それが「墜落遺体」というドキュメンタリーで、日本最大の航空事故を題材にしたものです。
新装版 墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)
この本に「外国人犠牲者に見る宗教観の違い」という章があり、この事件の犠牲者の中に少なからずいた外国人(のうちキリスト教徒)の遺族が、遺体の識別や引き渡しについて日本人の遺族ほど強く望まなかったと記述されています。
その理由として、キリスト教の宗教観では、死んだ人の「精神」は神さまの元へ行くので、空になった身体はもはや物体と同様であるということでした。
日本人が「足がなくては三途の川を渡れない」と、欠損した遺体を気の毒に思うのとは対照的な価値観に、作者も驚かされたという風に書いてありました。
もちろん、事故自体が約40年前のものですし、キリスト教徒の中にも色々な価値観があるでしょうから一概には言えません。
しかし宗教観が違う以上、私が思うほどの嫌悪感を作り手やベッキーは感じていない可能性もあるかも、と思いました。
そうまでして手に入れた肉の器によって、はたして二度目のチャレンジは成功。
SOSを受け取った父親の通報により、ベッキーは無事救助されます。
ハンターの遺体も収容されていました。
スマホって本当にバラバラになるの?
ところで、iPhoneが飛行機から落とされて無事地上で電源がついたという話も一度だけじゃなく聞いたことがある気がします。
実際のところ600mから落としたスマホってやっぱりバラバラになってしまうんでしょうか。
というのも、スマホ本体が軽いことから、着地するときに本体にかかる衝撃は高さによってあまり差が出ないそうです。
つい最近、約5000mを飛んでいた飛行機から落ちたiPhoneが無傷で見つかったこともありました。
ただし、この例は草むらに落ちていたということで、荒野のごつごつした地面にたたき落されるのでは、やはり難しいのかもしれないですね。
というわけで、「FALL」意外な展開もあり面白かったです。
ぜひ観てみてください。
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