電車を待ってる「インセプション」ネタバレ感想

2020年8月27日

クリストファー・ノーラン監督「インセプション」

4DX上映に行ってきました。

 

とにかくディカプリオの顔が好きで、

特に「シャッター・アイランド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」以降の、

ガタイが良くなってからのディカプリオが大好きです。

 

好きな顔の男が泣いているだけでこちらも泣けてきます。

 

というか彼は「タイタニック」の天使みたいなビジュアルのときでも、

演技が男クサくて本当にいいですよね・・・

 

本作「インセプション」は、

脚本的にもビジュアル的にも全登場人物がめちゃくちゃ立っていてオシャレです。

 

以下、感想です。

なんだったんだ? というところがクリアになれば嬉しいです。

 

どんでん返しがある映画ではないので、ネタバレを知っていても十分楽しめると思いますが、

基本的に観ている前提で話していきますので、ご注意ください。

 

あらすじ

他人の夢の中に潜り込むことができるコブは、

深層心理の中からアイデアを盗み出す産業スパイとして、仲間のアーサーとともに暗躍していた。

 

しかしある日、ターゲットである実業家・サイトーに、夢であることを見破られ失敗。

敗走の道中、コブとアーサーはサイトーに捕まり、逆スカウトを受ける。

 

サイトーの依頼は、アイデアを「盗み出す」ことではなく「植え付ける」こと。

ライバル企業の次期社長に、会社を潰すよう仕向けさせるというものだった。

 

しかし、ひとりでには生まれないようなアイデアに誘導することは、

他者の介入をターゲットに悟られるリスクが格段に高くなる。

 

危険すぎるというアーサーの進言もあり、一度は断るコブだが、

「指名手配を受けている過去の罪を揉み消し、母国・アメリカに入国させる」

というサイトーの甘い誘いを前に、ついに依頼を受けることになるのだった。

 

コブ・アーサーに加え、夢の中の景色をリアルに構築するアリアドネ

ターゲットをアイデアに誘導する脚本を考えるイームス

深く夢に潜らせる薬を調合するユスフ

そして依頼の完遂を見届けようとするサイトー

 

6名は、ターゲットである次期社長・ロバートの夢に潜り込むのだった。

 

夢に潜る際のルール

本作では、

特殊な装置で繋がれた複数の他人で、夢を「共有」することができます。

 

夢の提供者に関わらず、夢を共有する全員が夢の中で明確な意思を持つため、

必ずしも「ターゲットの夢」に潜りこむ必要はありません。

 

夢の中で味わう痛みはリアルですが、

夢の中で死んだり、夢の外から一定の衝撃を受けることで、目覚めることができます。

 

夢の中でさらに別の夢へ潜ることもできますが、自分の提供した夢より下には降りられません。

下層に行くたび、時間の流れはゆっくりになり、

 

現実世界での1秒が、

第1階層では20秒、

第2階層では400秒(約6分)

第3階層では8000秒(約133分)

となります。

 

コブたちは、ロバートに潜入を悟られないよう、複雑な設計を考えだします。

 

階層の整理

誰の夢? 目的は?

がごっちゃになってくるので、以下に整理しておきます。

 

第一階層

提供者:ユスフ

場所:雨のロサンゼルス

 

ロバートの自衛システムに阻まれ、サイトーが負傷します。

 

本来、夢の中で死亡すれば目が覚めて現実世界に戻りますが、

今回は階層を深く構築するために鎮静剤が強く調合されており、

 

この夢の中で死んでしまうと「虚無落ち」してしまうことが明らかになりました。

 

虚無落ちすると、精神が現実世界と深層心理の間に取り残されてしまい、

心が死んで廃人になってしまうというのです。

 

これ以降、

「死なずに」「任務を完遂し」「第一階層まで戻ってくる」ことが目標となります。

 

第二階層

提供者:アーサー

場所:高級ホテル

 

ユスフの夢の中のアーサーの夢です。

ここでコブは、ターゲットであるロバートに、夢の世界にいることを明かします。

 

ロバートの側近であるブラウニングロバート父の遺言を奪おうとしていると伝え、

ブラウニング(ここではイームスが化けている)の夢へ潜り返すことを提案するのでした。

 

第三階層

提供者:ブラウニング ※イームス

場所:雪山の病院

 

ユスフの夢の中のアーサーの夢の中のイームスの夢に潜った一行。

 

”ブラウニングが隠している” 真実の遺言を手に入れるため、

ロバートを護衛しながら雪山の奥の病院へ向かいます。

 

※ ただしロバート主観で ”疑わしい” ブラウニングが隠したい真実、

つまりコブたちがそう思うように仕向けた、ロバートに見せたい遺言です。

 

イームスが作り出した偽物のロバート父に出会うことができれば、

「俺の真似をするな、自分の道を行け」サイトーに都合のよい遺言を遺し、

ロバートがそれを信じることで、ミッションコンプリートの予定でした。

 

しかしあと一歩というところで、

コブの亡くなった妻・モルが現れ、ロバートを射殺してしまいます。

 

虚無

提供者:コブ

場所:崩れかけた世界

 

第三階層でコブの深層心理であるモルに殺されてしまったロバート。

前述のとおり、この夢の中で死んでしまえば虚無へ落ちてしまいます。

 

ロバートを助けるため、コブとアリアドネは自ら虚無へ落ち、

深層心理の最下層で待ち受けるモルとの決戦に臨むのでした。

 

コブが作り出すモルの虚像

モルは、これまでも夢の中にたびたび現れてはコブの邪魔をしていました。

コブには、モルを拒否できない理由があったのです。

 

非常に仲の良い夫婦であったコブとモルは、かつて、

夢の中で時間の進みが遅くなることを利用し、約50年もの時をともに過ごしました。

 

私はこの50年について明かされるシーンが本当に好きで、

年老いた二人が手をつないで歩いている姿に、涙が出てしまいます。

 

しかしあまりに長く夢に潜りすぎたために、

モルはやがて夢を現実世界だと思い込むようになっていきます。

 

ついには、

「現実世界に戻る」つもりで、実際に自殺をしてしまったのです。

 

「夢から覚めるには死ぬしかない」と伝えた張本人であるコブは、

自責の念を感じ、今なお深層心理の深い場所にモルを置き続けているのでした。

 

死んだ人間から新たに与えられるものはありません。

 

夢(深層心理)の中の他者は「私の中のあなた」でしかないというのは、

私と同世代のオタクなら「新世紀エヴァンゲリオン」で履修済みの概念だと思います。

 

つまり全てのモルの行動はコブの深層心理によるものであり、

邪魔をするというのであれば、それはコブのモルに対する罪悪感、

あるいは破滅願望を表しているに他なりません。

 

それでもコブは、

死してなお夢に現れ続ける自分の中のモルを拒絶できませんでした。

 

だって人生を終えるほど長い時間を過ごしてもなお足りないほど愛していた人を、

そう簡単にデリートできるわけないんですよ!

 

自分の意思で、生かすことも、二度と会わないこともできるわけですから……

 

結局コブは、モルに囚われたままでした。

 

夢の中で死者と会い続けること自体、心が囚われ続けている証拠であり、

夢に現れるモルを消す(殺す)ことは、コブにとって死者との決別となるのでした。

 

ラストシーンをどう考える?

コブは苦戦の末、アリアドネの助けもありモルに打ち勝ちます。

 

そして、じき虚無へ落ちてくるサイトーを助けてから戻ると伝えて、

アリアドネとロバートを先に上の階層へ返しました。

 

はたしてその後、

第一層で負傷して瀕死だったサイトーは、雪山で死んで虚無へ落ちてきます。

 

作中で詳しくは説明されないのですが、虚無は潜在意識の最深部です。

落ちれば心身健康なまま現実世界には戻れません。

 

おそらく虚無に落ちた人間は、ここが現実世界だと思い込むようになるのではないでしょうか。

現実と夢の境目があいまいになって、自分が今どこにいるのかわからなくなる感じです。

 

ところで虚無はみんな同じ場所に来るのかな?

雪山で、サイトーがコブに繋がれた感じはなかったのですが・・・

 

虚無の中でサイトーと対峙したコブは

「ここは現実ではない、死んで元の世界に戻ろう。信じて飛び込め」と声をかけて、

自決用の拳銃をサイトーに渡すのでした。

 

ちなみに「信じて飛び込め」は、

この案件をオファーしたときのサイトーのセリフを踏襲しています。

 

その後コブとサイトーは飛行機の中で目覚め、無事アメリカに入国。

コブは自由の身となって自宅へ帰宅する……

 

のですが、

これが「現実」なのか?

 

監督自身あえて明らかにせずに描いているそうです。

 

個人的には「夢の中に囚われたまま説」推し

何かとコブを気にかけてお節介とも言える干渉をしてきたアリアドネ。

 

彼女の名前の由来は、ギリシア神話に登場する、

英雄が迷宮から脱出するのを手助けした女性と言われています。

 

「アリアドネ」の単語自体にも「とりわけて潔らかに聖い娘」という意味があります。

 

さらに、アリアドネの作っていたトーテム(現実と夢を区別するためのアイテム)は、

チェスのビショップの形をしていました。

 

ビショップはキリスト教的には「聖職者」を意味します。

 

彼女は穢れのない乙女で、

欲望に満ちた大人たちの対になるキャラクターとして描かれていたと考えられます。

 

そのアリアドネの手を放してしまったことが、すべてだったと思います。

 

おそらくコブは、虚無の階層でモルに殺されてしまいました。

 

モルとの過去に囚われたまま道しるべ(アリアドネ)を失くし、

虚無の底で永遠を過ごすことになるのでしょう。

 

この夢で死んでしまうと現実世界には戻れないため、

コブは戻れなくなってしまったのだと考えています。

 

つまり「老いたサイトーに会ったところから、コブは一人きり」説を推しています。

そこで、当初の目的を果たす「夢を見た」のではないでしょうか。

 

しかし、それは不幸であるとどうして言えるでしょうか。

一生醒めない夢なら、それはもう現実と言ってよいと思ってしまうのでした。