フィンガークロスで見送って「トゥルーマン・ショー」ネタバレ感想

2021年6月23日

「イエスマン」を観てやっぱジム・キャリー最高! となったので、

自然な流れで「トゥルーマン・ショー」を観ました。

 

イエスマンの感想はこちら

 

完全に大爆笑コメディを期待して観たので、驚いている間に終わってしまいました。

 

そもそも103分と比較的短めの映画で、

二度見ることを前提に作っているんじゃないかな? という構成になっています。

 

私も翌日に二回目を観ましたが、

すべて分かってから見ると見え方が変わるシーンもあり、より面白いです。

 

子どものころ人形遊びをしていたとき、

一瞬は誰でも考えたことがあるのではないでしょうか。

 

私は本当に私の意思で動いているのか?

私はどこかにいる誰かの操り人形なのではないか?

 

知らないところで全世界から見守られ、人生を仕組まれていた男性の逃走劇「トゥルーマン・ショー」

意外に泣けてしまいました。

 

 

あらすじ

シーヘブン島で暮らす平凡な会社員・トゥルーマンは、生まれてから1度も島から出たことがない。

 

というのも、

実はシーヘブン島はトゥルーマンのために作られた巨大なドーム状のセットであり、

彼は胎児の頃から人生の全てを、リアリティ番組「トゥルーマン・ショー」として、

世界中に24時間放映され続けているのだ。

 

トゥルーマン以外の人間は全員、友人や家族まですべてが雇われた俳優。

 

必要であれば台詞や行動を番組側に指示されながら、

トゥルーマンが島の外に出ないように誘導して番組を支えている。

 

トゥルーマンにも、世界の異常さに気づくチャンスは何度かあった。

 

そのうちの一つが、大学時代に一目ぼれした女性・ローレンから、

トゥルーマンを取り巻く世界の全ては虚構だと告げられたことだった。

 

彼女は密告の直後に「統合失調症である」として連れ去られてしまう。

 

トゥルーマンは、別の女性と結婚した今でもローレンを忘れられず、

いつかシーヘブン島を出て彼女を探すことを夢見ているのだった。

 

トゥルーマンが30歳を超えたある時期、番組側のミスが重なったことで、

彼は世界が何らかの作り物であることを確信する。

 

シーヘブン島を出ようとするとことごとく妨害に遭うことが疑惑に拍車をかけ、

トゥルーマンはついにカメラの死角から脱走し、単身ヨットで海に出るのだった。

 

トゥルーマンはカメラから逃げ切ることができるのか。

 

色々な疑問こそあれど

ありえない設定ですが、

そんなこと気にならないくらいほかに考えさせられることがあり、

世界の異常さについては意外にすんなり受け入れることができました。

 

が、一応色々あるので書き留めておきます。

 

トゥルーマンの人権問題

多分ほとんどの人がそうかなとは思うのですが、

まず考えたのはトゥルーマンの人権についてでした(笑)

 

言い訳とするには弱すぎますが、トゥルーマンは望まれない子として生を受けました。

番組の制作会社が彼の人生を買い取る形で、この世に生まれることを許されたのです。

 

夜の営みのシーンでは「揺れるカーテンの画」が映るとされており、

あまりにもプライベートなシーンは放映しない程度の配慮はあるようです。

 

また、トゥルーマンに真実を伝えようとして強制退場になったローレンは、

現在もトゥルーマンを救おうとしているようでした。

 

どうやら、

トゥルーマンの人権侵害を止めさせようとする団体が外の世界にはあるようです。

 

トゥルーマン以外の世界

シーヘブン島において、

トゥルーマン以外の人間は俳優のため、自由に出入りしていると考えられます。

 

途中で小さな女の子がトゥルーマンを見て

「ママ、あの人……(テレビに出てる人だ)」と言うシーンがありました。

 

また、トゥルーマンが予想外の行動を取るとセット配置が間に合わないなど、

他のキャストは島内で生活をしているわけではなさそうです。

 

「進撃の巨人」システムじゃダメだったのか

トゥルーマンは、いつか島の外へ出ていくことを夢見ています。

 

これを阻止するために番組側は必死になるわけですが、

そもそも「外の世界」を知らなければよかったのでは?

と思わずにはいられませんでした。

 

最近だと「進撃の巨人」や「約束のネバーランド」がそういう設定でしたが、

教育自体を変えてしまえばよかったんじゃないかということですね。

 

たとえば「進撃の巨人」では、

ある理由から一民族が離島から出ることなく過ごしています。

 

島の中では、自分たち以外の人類は滅亡したという教育がされていましたが、

実際には人類は滅亡しておらず、島外の文明は離島よりもずっと進んでいました。

 

「トゥルーマン・ショー」作中では、

トゥルーマンが見る新聞やテレビ番組も、小道具や仕組まれたものでした。

 

トゥルーマンのタッチしうる情報はすべて操作できたはずです。

 

監督のクリストフは、作られた脚本には飽き飽きと主張していました。

あまりにも現実と乖離した世界にするのは嫌だったのもしれません。

 

もしもトゥルーマンが、海の向こうがあるなんて知らないで生きていたら、

どうなっていたのかちょっと気になります。

 

この生活を捨てて旅に出る?

トゥルーマンには、唯一心を許せる親友・マーロンがいます。

マーロンももちろんキャストなので、番組側からの指示には逆らえません。

 

しかしその中でも、トゥルーマンを大事に思っているのは本心のようで、

番組キャストとしての自分とトゥルーマンの親友である自分の間に挟まれて困っているようなしぐさもありました。

 

そんなマーロンが、

世界一周の旅に出ると息巻くトゥルーマンにかける言葉は興味深かったです。

 

「恵まれたデスクワークの仕事を捨てて旅に出る?」

 

マーロンは「誰しもテレビに出るような人間になりたい」という台詞もあり、

彼にとってトゥルーマンの生活は、かなり恵まれていると思っているようです。

 

トゥルーマンはまさしく

「シーヘブン島」という世界の中心であり、彼のために世界は回っています。

 

現状維持で暮らしていくことに何も不自由ないではないかという主張も、わからなくはないですね。

 

トゥルーマンJr.は第二のトゥルーマンになった?

トゥルーマンの妻・メリルは、もちろん番組側が仕込んだ女優です。

 

大学時代から押しが強く、ローレンを忘れられないトゥルーマンを押し切って結婚までこぎつけます。

 

30歳を過ぎた現在は「子どもが欲しい」とトゥルーマンに迫り、

現在の安定した生活を手放さないように誘導しています。

 

しかし実際にはトゥルーマンを愛しているわけではありません。

 

トゥルーマンを愛している女性だと、ローレンのように同情して彼のおかれた状況を暴露してしまう可能性もあるので、絶対に愛情のない人間を充てなければいけませんでした。

 

そんなメリルは、二人の結婚式の写真で、

トゥルーマンに見えないようにフィンガークロスをしています。

 

乃木坂46の最新曲「ごめんねFingers crossed」でも印象的な、

中指と人差し指をクロスして十字架を作るポーズ。

 

相手に見えていれば「good luck(幸せを願っているよ)」の意味ですが、

あえて隠している場合は「あなたに嘘をついている」というジェスチャーになります。

 

別のレビューを見ると、十字架を作ることで神様に懺悔しているという解釈もあるようなのですが、

女優が作中で結婚するたびに懺悔していたらキリがないので、

トゥルーマンに向けたジェスチャーではないかと思います。

 

仕事とはいえ愛していない男性の子どもを産むのかよと思いましたが、もしかすると番組は、トゥルーマンJr.を第二のトゥルーマンにする予定だったのかもしれません。

 

島ひとつを丸ごと作りこんだセットには莫大な金がかかっている一方、

番組は化け物コンテンツとして世界中で人気を博しています。

 

できるだけ長く続けたいはずです。

 

トゥルーマンがそうだったように、母親にとって「望まない子」として生ませ、

番組が買い取る予定だったのではないでしょうか。

 

つくづく人権を軽んじた団体です(笑)

 

全てを捨てた先に幸せはあるのか?

トゥルーマンは、彼の人生を操ってきた監督の「どうせ外には出られない」という予想を超えて、非常口からセットの外へ出ていきます。

 

出ていくときの、貼り付けたような笑顔と台詞。

 

あえて最後に「いつも通りのトゥルーマンをお届けする」という発想が、

いま状況を把握したばかりの人間が取れる行動ではなく超怖いのですが、

それは置いておくとして……

 

顔どころかこれまでの人生のすべてを、世界中に知られているトゥルーマン。

プライベートのなさは、そんじょそこらの芸能人の比ではありません。

 

愛した女性が迎えに来てくれるとはいえ、外の世界に彼の幸せがあるのかは、

マーロンや監督が言うようにやはり疑問です。

 

どんな道を選んでも、この先一生彼は「普通の人間」にはなれなさそうです。

理不尽すぎてちょっと泣けます。

 

でもこの「捨てる」という選択肢こそ、

トゥルーマンが初めて自ら選んだものなのではないでしょうか。

 

彼の前途に幸多からんことを願って、フィンガークロスでお見送りしたいです。