見えない人はどのように世界を視ているのか?「見えない目撃者」ネタバレ感想

私は人の顔の区別がつきづらいので、出演者で作品を選ぶことは少ないのですが、

そんな中でも吉岡里帆さんは好きな女優さんの一人です。

 

可愛らしいお顔立ちだけでなく、

繊細な演技力が魅力の素敵な女優さんですよね。

 

というわけで、

以前から「吉岡里帆の演技がすごい」と聞いていた「見えない目撃者」を観てみることにしました。

 

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「見えない目撃者」あらすじ

警察学校を首席で卒業した優等生のなつめは、

交番配属の前夜に自動車事故を起こしてしまう。

 

この事故で車に同乗していた弟が死亡、

なつめ自身も失明し、警察官への道は閉ざされてしまった。

 

事故から3年、持ち前の努力と洞察力により、

視覚障がい者としての生活には適応したなつめだが、

現在も弟の死は乗り越えられずにいた。

 

そんなある日、なつめは接触事故の現場に居合わせ、

事故を起こした車の中から、助けを求める少女の声を聞き取る。

 

誘拐事件を疑い警察に届け出たものの、

視覚障がい者かつ精神科の通院歴があるなつめに、警察は耳を貸さなかった。

 

なつめは攫われた少女を救うべく個人的に捜査を開始するが、

やがて事件の闇に触れてしまい、犯人に命を狙われることになる。

 

2011年の韓国映画「ブラインド」を日本でリメイクしたサスペンス。

 

「見えない目撃者」はグロい?

恒例のグロさチェックです。

 

私は内臓出る系・痛がる系のシーンが苦手なので、

今回も【見えない目撃者 グロい】でエゴサしてから観ました。

 

「原作に忠実」「かなり頑張った表現」と、

清純派女優を主演に据えながらもかなり強めの絵面になっている様子。

 

ちょっと身構えていたのですが、

「内臓は出ない」という需要ど真ん中のクチコミがあったので、

安心して視聴できました。

 

痛いシーンはほとんどない

ハラハラする展開が続くものの、

「見えない目撃者」にグロさはそれほどありません。

 

猟奇殺人事件がメインですが、直接的な殺人シーンはなく、

痛そうな描写はほとんどありませんでした。

 

強いて言えばラストの方の戦闘シーンでしょうか。

 

ちょっとキツめのやられ方をする人がいますが、

不意打ちではないので、その時だけ見ザルになれば大丈夫です。

 

 

個人的に安心したのは、

拷問など血を流しながら痛がるシーンはなかったことです。

 

怖くてもパッと目を背ければ終わります!(笑)

 

解体シーンや断面が苦手な人は注意

ただ、死体の損壊シーンがあります。

 

猟奇殺人事件を取り扱う物語の展開上、

欠損死体が明るい画面の中でしっかりめに映ります。

 

欠損死体や解体シーンが苦手な人はちょっと注意してください。

 

こちらも、生きたまま刻まれるわけではないので、

「痛そう~~」というキツさはありませんでした。

 

また、損壊された死体も何度かアップで映るのですが、

幸か不幸かグチャグチャになってしまっているので、

喧嘩で顔がぼこぼこになっている絵面とそれほど変わらない印象でした。

 

他の映画で言うと「セブン」が観れる人なら大丈夫だと思います。

 


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「セブン」の場合は生きたまま刻まれる人もいるので、

「見えない目撃者」の方がソフトかもしれません。

 

「見えない目撃者」ネタバレ感想

さて、本編の感想ですが、

笑ってしまうくらい全員単独行動。

 

不自然なまでにみんな積極的に危険に身を投じていきます。

 

特に終盤は、応援が来るまで待とう!?

と何度思ったことか。

 

また、木村刑事や春馬くんが、なつめに対しとても協力的なのですが、

これもまた、「正義感」の範囲を超えているような気がしました。

 

とはいえ、後述するように、

なつめのギャップに触れたことで彼女への信頼感が増し、

できることをしたいという心の動きがあったのだろうと推測できます。

 

それにしても春馬くんは、

たまたま事件の目撃者になってしまっただけにしては、

首を突っ込みすぎ感は否めないのですが……。

 

なつめの「戦う弱者」というギャップ

さて、本作の面白さは、

主人公のなつめのギャップにあると思います。

 

彼女は警察学校で文武ともに優秀な成績を収めながらも、

本配属の直前にその夢を絶たれた元・警察官です。

 

といっても、それを知らない他人からすれば、

「目が見えない若い女性」=圧倒的弱者に過ぎません。

 

しかしなつめは、視覚を失ったことで、

むしろ本来見えない情報まで視えるようになりました。

 

自分の視覚障がいを逆手に取ることすらあり、

少なくともなつめにとって、

見えないことは他人が思うほどのハンデではないことが分かります。

 

彼女は音をはじめとした視覚以外の情報から、

時に健常者以上に適格に、状況を把握します。

 

それに加えて、警察学校を首席で出るほどの身体能力ですから、

実はかなり攻撃力の高いキャラクターなんです。

 

「視覚障がい者」「女性」低く見積もられたところに、

そういったギャップがあることで、

対峙した相手にはより大きな驚きがあるのではないでしょうか。

 

その驚きは、物理的な強さだけでなく、

現役の警察官を推理でねじ伏せるシーンにも表れています。

 

なつめがただのOLだったら、

一度は耳を貸さなかった警察が、これほど手のひらを返したでしょうか。

 

なつめが強そうな女性警察官だったら、

殺人鬼はもう少し用心したのではないでしょうか。

 

そういう意味でも、

いかにもか弱そうな吉岡里帆さんを当てたのは素晴らしい配役だなと思いました。

 

最近の女性は強い

孤立無援の女性という圧倒的弱者が、

サイコ男という圧倒的強者に狙われる……

というストーリーは割と近いものが思いつきます。

 

最近見たものだと、「サイレンス」「透明人間」とか。

2020年代の女は戦う!「透明人間」ネタバレ感想

 

とくに「透明人間」は、

周囲が相手にしてくれなくてももう自分一人で戦うわ!

という姿勢に通ずるものがあるように感じました。

 

どんな女性でも圧倒的な力の差がある生き物に果敢に挑めるわけではないと思うのですが、

本作においては、なつめが光を失う前の姿が冒頭シーンで描写されていることで違和感なく受け入れられました。

 

女性がただヒステリックに叫び縮こまっている様子ではなく、

自分のできることを必死に考えてパワーの差を埋めて勝つ、

という作品が増えてきたのは嬉しいです。

 

見えない人の視ている世界

ところで、

なつめは、中途失明を経験した視覚障がい者です。

 

本作では、視覚以外の情報から徐々に周囲を掴む様子が、

線画が滑らかに描かれていく形で表されていました。

 

彼女には見えていた期間があるため、

先天的に目の見えない人に比べると、

実物に近い画が頭に浮かぶことになります。

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか

目が見えない人の「視ている」世界は、

視覚のある人がただ目をつぶるのとは全く違います。

 

実際に目が見えない人たちが、

どのように世界を把握しているのか、参考になる書籍があります。

 


目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

 

この本では、視覚に障がいを持っている人が、

私たちが思っているよりもかなり正確に、

そしてユニークに世界を把握していることが分かります。

 

作中のキャラクターたちあるいは私たちが、

いかになつめをかいかぶっているか思い知ります。

 

興味がある方はぜひ読んでみてください。